ゆで蛙
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とあるところに べらぼうに いけずな 男が おりまして
その生業に 蛙獲り  さて かわずとり
初夏の 田圃の 片隅に 息を潜めて 待ちまする

月が真上にかかる頃 田圃の蛙が歌い出す
それを待ちかね 蛙獲り  月の明かりをよりしろに
むず、と 蛙を 捕らへます

腰に荒縄くくりつけ そこに付けたる びくの中
ひょいひょい 蛙を 放り込み 田の一枚を 一仕事
決めて 一時 過ごしたら 後は とっとと 帰ります
小夜もふけたる 川端の 苫屋に ひとり 住み慣れて
嫁に来たいと 言ふほどの 物好き女も 居りもせず

今宵も ひとり ほろほろと 手酌の肴に いたすべく
汲み置きしたる 川水の 日向温さを 割れ鍋に
日の暮れ頃に 集めきし 流れ木っ端に 火をばつけ
手慰みにと 作りたる 自在鍵 これ幸いと
手加減 火加減 水加減 そこらの 野菜 ざく切りに
捕らえ来たりし 蛙をば 鍋に ぼちゃんと 投げ込みぬ
さても 小鍋の 蛙ども 日向ぬくさに 気をゆるし
ゆるりと 五体 伸ばしつつ おのれの行く末 知らぬまま
目ン玉 くるり そちこちを 眺め しばしの 湯治の気

さても さんすけ 湯加減が ちっとばっかり 熱すぎる
はっ、と 気づきし その時は 鍋は ふつふつ 煮えたぎり
あわれ 蛙は 天国へ いやさか 地獄へかもしれず

旅立つ者の しきたりに 肉(しし)の堅さを いや増しつ
白目 ひんむき 我が身をば 捕らへ来たりし 男をば
かっ、と 睨もふ 間もなくて その身に 沁みる 味噌の味
・・・・・。
リズムよく、声に出して
お読み下さい

夜更けの 川面 皓々と 照らす 見事な 十三夜
おどろの 所業 知らぬげに 遠く 花火の 二つ 三つ
これぞ 名高き 蛙鍋 下々達の ごちの名は 
ゆで蛙とぞ 申しまするぞ 御喝采・・・・。
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