赤いハイヒール
くまの 男の子と ねこの 女の子が 浜辺に遊びに来ました。
温かい陽射しの下で、ふたりは 寝ころんで、穏やかな時間を楽しんでいました。
突然、海から一陣の突風が吹いてきて、あっという間に、ねこの女の子をさらってしまいました。
潮の香りの風は、とても強くて、温かくて、ねこの女の子は、しばらくは泣いていましたが、じきに潮風が好きになりました。潮風は、遠い異国の話を聞かせてくれました。珍しい、プレゼントもたくさんくれました。どこへでも連れて行ってくれました。なにより、ねこの女の子を、大切にしてくれました。
潮風は言いました。「キミのためなら、どんなことだって、するよ。いつだって、なんだってできるよ。キミがこの世からいなくなるまで、ずっと、たいせつに、たいせつにするよ。」潮風は、赤いハイヒールを、ねこの女の子にプレゼントしました。
ねこの女の子は、ハイヒールを履きました。足が痛かったけれど、頑張って履きました。潮風を、喜ばせたかったからです。せっかく、「似合うよ。」って言ってくれた潮風を、悲しませたくなかったからです。
アイコン
潮風は、いつも、ねこの女の子を抱きしめました。でも、ねこの女の子は、潮風を、うまく抱きしめることができませんでした。風は、捕らえようとすると、するりと腕から、指から、抜け出てしまったからです。
ねこの女の子は、ときおり、悲しい、と思いました。潮風の気持ちに、もっと応えたい、と、いつもいつも想い続けました。潮風は、そんな様子を見て、ねこの女の子は喜んでいない、と思いました。じぶんが、こんなに一生懸命なのに、彼女は、もっと他の誰かを求めているのではないか、と思いました。そんなとき、南風が、潮風に優しくささやきました。潮風は、南風の方が、自分を愛していてくれる、と思いました。潮風は、ねこの女の子を、元の浜辺に置き去りにして、南風と一緒に、遠い国へ行ってしまいました。潮風は言いました。「もとどおり、くまの男の子と一緒に居ればいいよ。」
でも、潮風と行ってしまった女の子を、男の子は心から受け入れてはくれませんでした。女の子も、大好きだ、と、言ってくれた潮風が、こんなに簡単に心変わりしてしまうなんて、信じられませんでした。女の子は、浜辺に、赤いハイヒールを埋めました。悲しい気持ちも、埋めてしまいたかったけれど、どうしても、それは、砂の下から、顔を出して、女の子の胸をかきむしりました。
風っていうヤツは、気まぐれで、そんなものだよ、って、夜空の星は、思いましたが、ただ、キラキラと、女の子を励ますだけでした。
アイコン
童話の森へ
トップページへ